飛躍を感じさせた2023年シーズン

　2018年のドラフト7位で埼玉西武に入団した佐藤龍世選手。21年の途中に北海道日本ハムにトレードで移籍するも、思うような成績を残せず翌年のオフに古巣へ復帰。プロ5年目の昨季はシーズンを通して一軍に帯同し、自己最多の91試合に出場。キャリアハイとなる打率、出塁率をマークするなど、ブレークを予感させる1年となった。

積極的な打撃スタイルから一変

　佐藤龍選手のバッティングをデータで掘り下げていくと、昨季は打席でのアプローチに変化が見られた。2022年までは全体のスイング率がリーグ平均を上回る50％台を推移していたものの、昨季は37.5％にまで低下。また、1打席あたりの投球数を示すP/PAは、昨季200打席以上に立ったパ・リーグの選手で2番目に高い4.39をマーク。例年以上に相手投手に球数を投げさせるなど、これまでの積極果敢な打撃スタイルから一変していた。

追い込まれてからはゾーン問わずにスイング

　続いてストライクカウント・ゾーン別のスイング率を見ていく。前述のスイング率低下に比例するように、昨季は追い込まれる前のストライクゾーンスイング率が37.3%、ボールゾーンは16.2%と前年から大きく低下。浅いカウントではボール球をほぼ振らず、ストライクゾーンの投球に対しても以前の積極性が影を潜めていた。その結果、2ストライクに追い込まれる打席も前年から約14％増加。打者にとって不利といえる打席が多くなっていた。

　その2ストライク時のゾーン別スイング率を見てみると、ボール球のスイング率が一転して43.4％まで上昇。リーグ平均の45.3％に迫るなど、追い込まれてからはゾーンを問わずスイングしていた。ボール球に手を出しやすい2ストライクの打席が増えたにも関わらず、なぜ昨季の佐藤龍選手は例年以上の成績を残せたのだろうか。

飛躍をもたらした2ストライクからの対応力向上

　手を出す割合が増えていた2ストライク時のボールゾーンだが、スイング時の結果を見てみると昨季はコンタクト率が大きく改善。空振りの割合が25.5%まで減少し、ボール球でも高い確率でバットに当てていた。また、コンタクト率の良化に伴い、ファウルの割合も前年から11.6%上昇。追い込まれた後でも、難しい球をファウルで逃れる対応を見せていたのだ。

　追い込まれてからの対応力向上は打撃成績に変化をもたらしていた。2ストライク時の打率は三振も成績に影響するため、一般的に数字は大きく下がる傾向にある。佐藤龍選手も2022年まではリーグ平均と同じく打率１割台を推移していたが、昨季は打率.232まで上昇していた。さらに掘り下げて見てみると、前年まで半数近くを占めていた三振の割合が減少。また、2ストライクから四球を選ぶ割合が12.6%まで上昇していた。ボールゾーンに手を出しながらも簡単に三振に終わらない粘りを見せた結果、昨季は例年以上にヒットや四球を増やせていたのだ。

リーグ屈指の打ち取りにくいバッターへ

　前述の打率と同様、2ストライク時の出塁率はこれまで1割台を推移していたものの、昨季はリーグ上位の出塁率.333と好成績をマーク。パンチ力を持ち味とする佐藤龍選手だが、打者にとって不利な状況での対応力アップは昨季のキャリアハイにつながり、リーグ屈指の打ち取りにくいバッターへと成長を遂げていた。

　兄貴分として慕うオリックス・森友哉選手が埼玉西武時代につけていた背番号10を今季から背負う佐藤龍選手。さらなる飛躍が求められる中、4月6日の古巣・日本ハム戦ではシーズン1号となる3ランを放つなど、ここまで確かな存在感を示している。今後も打席内で自身の持ち味を発揮し、獅々打線に欠かせない存在としてレギュラーの座を勝ち取りたい。

※文章、表中の数字はすべて2024年4月25日終了時点

文・データスタジアム

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